臺灣(台湾)。「
中華民国に行く」と言わないところが、この国の難しい立場を表している。そしてこの国が難しい立場にある現状には、日本にも大きな関わりがある。あれやこれやを“何となく無かった事”にして付き合っている両国の関係は、過剰なまでの要求を突きつけてくる中国や韓国に比べて問題点が見えてこない分、かえって微妙な空気が感じられる。この空気感が億劫でアジア地域はこれまで敬遠していたが、かの国が日本の記憶を持っているうちに行くのも悪くない……行かなくてはならない……と思い、台湾旅行を決意した。いや、まあ、正直に言えば予算的な問題(安く行ける)が大きいのだけど。
一昔前まで、台湾行きの航空便は羽田から出発していた。中国に配慮した日本政府が、中国系航空会社と台湾系航空会社を分離していたためだ(ちなみについ最近まで日本航空、全日空は、わざわざ別会社を作り台湾行きの便を運行していた)。しかし航空行政の移り変わり、中国台湾間の(昔に比べればだけど)平和ムードにより、ここでも“何となく無かった事”の力が働き、今では成田空港から台湾行きの便が運行されている。第1ターミナル南ウイング、
エバー航空(長榮航空公司)
EVA Airwaysのスタッフが、搭乗手続き開始前のミーティングを行っている。そしてスタッフ全員によるお辞儀……まるでデパートの開店のような……で搭乗手続きが始まる。この規律の良さが、ちょいちょい重大事故を起こす
チャイナエアライン中華航空China Airlinesとの差か。気持ちよく搭乗手続きを終える。
出発予定は14時15分、しかしさすが規律正しい日本・台湾の混成チーム、予定5分前には搭乗ゲートを離れ、無事空の旅が始まる。
台北までは約3時間、食事のサービスは無いとふんで、成田でしこたま回転寿司を食べてきたが、なんとしっかり1食分提供される(そして出された物は無理して食べる)。テレビはVOD(ビデオ・オン・デマンド)で日本語吹き替えによる映画、ゲーム等が楽しめる。しかし飛行時間が短いので映画を見る場合は注意が必要、肝心のクライマックスが見られないまま終了する可能性もある。もっともオンデマンドなので、帰りの便で続きを見ても良いが。選んだのは「スパイダーウイックの謎」。なかなか発想は面白いが、最後は意外にあっさり悪者が退治されてしまい、次々とどんでん返しが起こるハリウッド的演出を期待していると少し物足りない。
現地時間16時30分、予定の30分前に
台北桃園国際空港に無事到着。入国検査も問題なく進み、
台北車站(台北駅)に向かう
國光客運(国光客運)のバスに乗る。途中3度ほど急ブレーキをかけられた他はまずまず順調なドライブで、18時30分、台北駅に到着。夕暮れの台湾は気温30度。
今回の旅行は、台北を拠点に各地を巡る予定。よってホテルは何より立地を最優先して台北駅の目の前、
台北凱撒大飯店Caesar Park Taipeiを予約してある。駅から見上げたビルは古さを感じさせ「これは失敗したか?」と思ったが、客室は上々。スイートルームと言っても良いくらいの広さの部屋と、独立したシャワールームを持つバスルーム、窓は二重で外気温と騒音を遮っている。予約時点で禁煙フロアーの部屋を指定できるのも良い。10階、1020号室、通りの向こうには台北駅がどんと鎮座している。
夕食を食べに出かける。着いたばかりで全く土地勘が無いのでとりあえず台北駅ビルへ。ここの2階が、なんと台湾最大をうたうレストラン街、
微風台北車站Breeze Taipei Stationになっていて、和洋中台、カレー専門のフードコートまで、何でもありありの世界。なんだかよくわからないので
台北ナビ……今回大変に役に立ったサイトです……で紹介されていた
功夫 蘭州拉麵(功夫 蘭州拉麺)へ。“蘭州”は、そもそも中国の地名だけど、台湾名物の牛肉麺のお店。一人が「いらっしゃいませ(……、と、言ってると思う)」と叫ぶとスタッフ全員が唱和する元気の良い店だ。日本語のメニューは無かったが、台北ナビの情報を参考にすればなんとか注文可能。肉のタイプやスープの種類等、よくわからない場合はカンで選びましょう。
出てきたラーメンは、台湾独特の香り。スープはこってり系が幅を効かせる日本に慣れていると少し物足りない(薄く感じる)。麺を箸で持ち上げると、あれ、切れない、別なところに箸を入れ持ち上げると、やっぱり切れない。普通のラーメンだと2〜3回繰り返せば適度に一口分の麺がすくえるが、さすが一本麺、楽しいけど食べにくい。
レジでちょっと戸惑う。伝票を渡すと「!@#$√*$&」と、こちらが台湾語を理解している、つまり台湾人だと思って普通に話しかけてくる。「なんでこいつら金払わないんだあ」と何度か繰り返し問いかけて来た後、こちらが困った顔をしているのを見てやっと言葉がわからないと理解し、なんと日本語で数字を読み上げてくれた。この先何度も体験することになる場面だが、台湾では、(1)彼らから見ても日本人と台湾人の区別が付かない(2)たいていの商売人は日本語で値段を伝えられる、ようだ。
ホテルに戻る。テレビではNHKの衛星放送(アナログ)を見ることができる。日本との時差は1時間、外国に来ているという実感が薄れていく。あまり疲れを感じることもなく、気持ちよく就寝。1日目、終わり。