OYOYO Web Site
top image

2006portugal 09/14
南へ

 日の出前に起床。鏡のようになめらかな川面に対岸の町の灯りが映っている。朝に夕に、いろいろな表情を見せてくれたドウロ川Rio Douroともお別れだ。窓の下、昼間はカフェで賑わう広場は朝の掃除中、高圧の放水で石畳を洗い流している。午前8時、観光客が繰り出してきてホテルの前が混雑し始める前に出発。フレイショ橋Ponte do Freixoへ向けて川沿いに走るとドウロ川は霧に満ちてきた。

 今日の宿、リスボンLisboaへ向けて300キロを一気に南下する。ベンツで走る高速道路Auot-Estradaは快適、快適。サービスエリアÁrea de Serviçoで朝食。お馴染みのガラオンGalãoと、カツサンド。普通に日本で食べているトンカツと全く同じ。アヴェイロAveiro名物のお菓子、オーボス・モーレスOvos Molesを購入。5センチくらいの大きさで、卵黄を煮詰めたあんこをモナカの皮に挟んだような感じ。なんだか駄菓子屋で売っているような味わい。アソーレスのお菓子もそうだけど、これも和菓子と言われても違和感ない。

 制限速度のよくわからない……なんせ140キロで走っていてもどんどん追い越される。ポリスマンは居ないの?……高速道路を走ること4時間、リスボン空港に到着、名残惜しいがベンツを返却。出発ロビーへ移動しお土産を物色。ポルトガルには一般的な土産物……マカデミアナッツチョコとか、ビーフジャーキーとか……が無い。空港で売っているおもな物は、ワイン……ヒースロー空港で機内持ち込み不可、陶器……カラフルで可愛らしいが日本の基準からすると質は低い、コルク製品……地味におしゃれだけど結構高価。どれも決め手に欠けるなあ。

ヒエロニムス・ボッシュ

 タクシーでホテルへ向かう。今日のホテルはあまり語りたくない。あの狭くて冷房の無い初日に泊まったホテル、ドゥアス・ナソンエスDuas Naçõs Residenceだ。今度の部屋は200号室。わずかに開く窓の外は汚い路地裏、さらに狭くなった浴槽、やはり立地以外にお薦めする要素はありません。

 荷物を解き、リスボン観光へ出かける。通りを南に向かうとコルメシオ広場Praça do Comércioに行き当たる。広場からテージョ川Rio Tejo沿いを走る市電に乗り、映画で話題になった7月24日通りAvenida 24 de Julhoを西へ。世界遺産の街であるリスボンにはそれなりに見所はたくさんある。が、いの一番に向かったのは国立古美術館Museu Nacional de Arte Antigaだ。ここにどうしても見ておきたい絵がある。

 市電を降り、坂の上にある……日差しが強く、登るだけで結構疲れる……美術館へ。どうしても見ておきたいのは、狩野派の南蛮屏風……ではなくて、ヒエロニムス・ボッシュJheronymus Bosch「聖アントニオの誘惑」Tentações de Santo Antãoだ。1階の廊下の奥、57番の部屋に置かれている。

 ヒエロニムス・ボッシュ、この画家についての知識は全くない。が、なぜ注目しているかと言うと、ジブリ作品の世界をテーマにしたテレビ番組で、宮崎駿が感銘を受けた作品として紹介されていたからだ。高さ1メートルほどの大きさの、三面鏡のような(三連祭壇画、と言うらしい)形式の作品で、アントニオに降りかかる誘惑の数々を描いたとされている。

 快楽にふける半人半獣のような人物や、空飛ぶ魚、空襲に焼かれる街。絵にぐっと近づき、虫眼鏡で眺めたいほどの緻密さで、画面の隅々まで余すところ無く奇妙な物体が描かれている。いったいヒエロニムス・ボッシュとはどんな頭をしていたのか、人間の正と負を巧みに描き込むジブリ作品のイマジネーションの元になったと思えばなおさら感慨深い。

 一応、南蛮屏風も見ておこう。2階の東洋美術部屋14番に置かれている。雲を仕切りにして幾つもの空間を一枚の絵に描き込む手法はヒエロニムス・ボッシュにも劣らない傑作だ。ちなみに首の回りに変なびらびらを付けた外人、ナンバンとはおまえらの事だ……と言うのはポルトガル語でちゃんと説明してあるのだろうか。

テージョ川

 リスボンでの唯一最大の目的を達成したので後は適当に見て回ろう。市電に乗り、テージョ川をもう少し下れば世界遺産のベレンの塔Torre de Belémだ。気がつけば、お昼ご飯抜きでもう午後3時。オープンテラスのカフェでコロッケとジュースを買う。カウンターのおじさんにうまく伝わらず困っていたら「このジャポンがこっちのジュースだと言ってるぞ」南蛮人のじいさんが助け船を出してくれる。

 ベレンの塔は、16世紀の初めにテージョ川の入り口に作られた要塞で、6階建ての石の砦だ。もともとは対岸にも同じ物があり、広いテージョ川の河口を大砲の射程内に納め、行き交う船を監視していたそうだ。四方に砲台や監視のための詰め所を持つ堅牢な要塞だが、世界遺産に指定されるだけあって美しさも兼ね備えている。屋上からは、広いテージョ川に架かる4月25日橋Ponte 25 de Abril、対岸の巨大なキリスト像が見渡せる。

 お次はぶらぶらと散歩気分で発見のモニュメントPadrão dos Descobrimentosへ。ベレンの塔からは1キロ程だ。エンリケ王子を先頭に、ポルトガル黄金時代の英雄達がならぶ巨大なモニュメントだ……ただでかいだけだが。広場には世界地図があり、ポルトガルの世界進出をあらわしている。ちなみに日本到達は1541年(種子島への鉄砲伝来の2年前)、アソーレス発見は1427年。

ポルトガル、最後の夜の過ごし方

 発見のモニュメントの市電を挟んだ向かいには、これまた世界遺産のジェロニモス修道院Mosteiro dos Jerónimosがあるが時間切れ。壮麗な外観を見ただけで電車に乗りリスボンの街へ引き返した。15番の電車を終点まで乗ると、バイシャ地区Baixaの北側、フィゲイラ広場Praça da Figueiraに到着する。そのまま北に向かえばレストラン街、ポルタス・デ・サント・アンタオン通りRua dos Portas de Santo Antãoだ。

 ここは観光客向けの店が多く、ポルトガル語(英語)が全くわからなくても日本語のメニューが店頭にも出ているし、店員も片言の日本語で気軽に話しかけてくる。素人が思いつくポルトガル料理はもう十分満喫したので、ちょっと変わったところでフランゴ・アサードFrango Assado(チキンの丸焼き)を食べることにした……って、まんまガイドブックのお薦めだけど。店の名前はボンジャルディンResaurante Bonjardim

 ここはポルトワインを各種取りそろえていて、グラス単位で味わえる。ポルトの予習復習、またはポルトに行った気分で各ワイナリーをはしごしてみるのも楽しいかもしれない。思い出のサンデマンを注文、甘い香りにまさしく酔いながら、皮パリパリの焼き鳥をいただく。レイタオン・アサードLeitão Assado(子豚の丸焼き)を食べたときほどの感動は無かったが、まあ普通に美味しい。

 デザートに、パイナップルのポルトワインがけをいただく。アソーレスのパイナップルに、ポルトのワイン。ポルトガル最後の夜に、ポルトガルの旅を凝縮したような甘酸っぱい味わいに酔い、大満足で旅を締めくくる……ホテルのことは考えないようにしよう。


09/14 end


Photo
早朝のドウロ川puffin 早朝のドウロ川
鏡のような水面に映る町並み。
フランゴ・アサードpuffin フランゴ・アサード
世界中何処にでもあるようなローストチキンだが、ポルトガル名物らしい。
こちらは肉厚に切られたパイナップルにひたひたのポルトワイン。
REDUNICREpuffin REDUNICRE
ポルトガルで最も目にしたクレジットカードシステム。御用達カードのJCBも結構使えた。サイン無し(暗証番号入力)も可。
先読み 先読み 先読み candybox counter