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2006portugal 09/13
今日は一日、ポルトです。

 ドウロ川Rio Douro上流の谷間が朝焼けに染まる。輝きを増した太陽がドン・ルイス一世橋Ponte de Dom Luis Iの欄干と重なる位置まで昇ると、電車が通る度にきらきらと光が点滅する。かつてこの部屋で暮らしていた人は、毎朝こんな朝を迎えていたのだろうか。

 ホテル2階(ロビーを1階とした場合)のレストランで朝食を食べる。外観を見ても何処までがホテルかよくわからないが、内部のつくりも複雑で途中渡り廊下のようなところを通る。レストランの大きな窓……恐らくは元々は玄関扉があったと思われる……からは朝日に輝くドウロ川が見渡せる。

 今日は一日ポルト観光。そもそもが世界遺産歴史地区にあるホテルのなのでたいていの名所には徒歩で行ける。まずはサン・フランシスコ教会Igreja de São Franciscoへ。川沿いを少し歩いて坂道にはいるとエンリケ航海王子の家Casa do Infanteとされている建物があるが、この時間……午前9時過ぎ……はまだ開いていない。坂道の上には広場があり、そこの地下駐車場に車を止めてある。広場の横がサン・フランシスコ教会だ。

 教会の周りにはすでに団体観光客が居る。すぐ目の前から出発する市電を背景に写真を撮っている人も多い。入場料を払って中へ。ポルトガル各地で豪華な教会を見てきたが、贅沢もここまで極めたか、天井を含めた内壁のほぼ全てが金泥細工で飾られていて鈍く光を放っている。大航海時代の栄華がどれほどの物か……今の社会システムで同じ物を作るのは不可能だろう……想像も付かない。壁の一角に、キリストの家系樹(家系図を木の幹に見立てて作った彫刻)がある。キリストの家系?と言われてもダ・ヴィンチ・コード?? しか思い浮かばない自分にとっては何がありがたいのかよくわからない。

ドウロ川クルーズ

 教会を出てドウロ川へ、クルーズ船に乗ってみよう。幾つかの会社があり、結構客の奪い合いが激しい。ちょうど時間の合った、ホテルのすぐ前から出発する“6つの橋を巡る1時間コース”に参加。少なくとも100人は乗れそうな船ではあるが、船外の主要な位置……写真を撮るのに適した席……は元気な年配の団体に早々と占拠され、仕方がないので船室内の暖かな席に座る。なんだか逆のような……。

 川沿いにポルトの街が見渡せるが正直あまり注目する物はない。このクルーズに参加した最大の目的は、ドナ・マリア・ピア橋Ponte de Dona Maria Piaを見ることだ。1877年に、後に有名な塔を建てることになるフランス人技師、エッフェルEiffelによって作られた鉄道専用の橋で、今は使われていないのでこうして船から見上げるしかない。

 船は最初に下流に向かい、折り返し上流に向かう。途中から小雨が降り始めたが外の皆様は気にする様子もない。ドナ・マリア・ピア橋が見えてきた。全体の形はアーチ型で、アーチ部分は見事なトラス構造(細長い部材を三角形に繋いだ構造)により形作られている。橋台の部分で曲率の違う2つの円が重なる、後のエッフェル塔にもつながる美しい作りだ。

 1時間丁度で船着き場に到着。部屋に戻り傘を用意した後……本当に便利な位置にあるホテルだ……、対岸のワイン倉庫街に行くことにした。対岸に行くにはドン・ルイス一世橋を渡ることになるが、この橋は車と人が通る下層部分と、鉄道と人が通る上層部分の二層構造になっている。下層階はホテルの前から緩い上り坂ですぐだが、上層階は昨日行ったサン・ベント駅Estação de São Bentoのあたりまで登らないと行けない。だが便利なことに、橋のたもとからケーブルカーが出ている。この、ケーブルカー、ちょっとおもしろい。

 ケーブルカーは、高低差のある2地点間を結ぶ鉄道形態だが、通常は斜面の勾配が一定の(もしくは一定になるように削った)場所に設置される。そうでなければ勾配に合わせて作られた座席が実に座りにくい物になってしまう。だがここのケーブルカーの路線は斜面に合わせた自由な勾配をしている。そして勾配の違いを吸収するために、車両の下に蛇腹状(外見は。実際の構造は不明)の装置があり、車両が常に水平になるようになっている。

 あまり利用者は居ないようで、貸し切りの車両はスムーズに斜面を登っていく。登るにつれて、ドン・ルイス一世橋の全景が見渡せるようになる。ケーブルカー・マニアにはたまらない車両だが、すぐに頂上駅に到着。橋からは世界遺産の旧市街と、ワイン倉庫のあるガイア地区Vila Nova de Gaiaの両方が手に取るように見渡せる。ただ意外と歩道の幅が狭く、手を伸ばせば届く距離を電車が通過すると風にあおられる。

ポルトワイン

 ガイア地区に到着。ワイン倉庫街に入ってすぐのカフェで昼飯を食べる。ホットサンドのようなものを注文すると、ポルトガルに来て初めてケチャップが付いてきた。しかしいまいちの割に値段も高い。後で散歩していて見つけたのだが、倉庫街の裏にイワシを店頭で焼いているおいしそうなレストランがあった。やはり表通りの店よりも裏道においしい店はあるようだ。

 多くの倉庫が建ち並び、それぞれに見学コースを設けているが、選んだのはサンデマンSandeman、ホテルに続き、トラベリックスつながりだ。受付に行くと、「英語でよろしいですか?」と確認される。何ヶ国語を用意しているのか不明だが、言語別にグループを作り案内をしているらしい。入場料は3ユーロ。時間になると、サンデマンのトレードマークである黒マントを着た女性がやってきた。彼女の案内で倉庫の中を回る。

 サンデマンはもともとイギリスの会社で、後にこの地でポルトワインを作るようになったそうだ。そう言う意味では老舗ではないのかもしれないが、イギリスとポルトワインの関係は古くからあり、目を付けたイギリスの会社が乗り込んできてもおかしくはない。倉庫内はいい香りがしているが、お酒の飲めない妻でも問題はない(以前行った、山梨のサントリー白州は強烈だった)。樽の一つにサインがしてある物があった。ルイス・フィーゴを含むサッカー・ポルトガル代表チームのものだそうだ。

 倉庫内を一周し……工場ではないのでそれほど回る所はない……、最後にサンデマンの歴史とポルトワインを紹介するビデオを見る。ビデオのスタート画面に言語選択メニューがあり、日本語もあった。日本語の案内係が常駐しているとは思えないが、少なくとも団体客には対応しているようだ。

 スタート地点に戻り、最後に赤、白2種類のワインの試飲。実はポルトワインというものを初めて飲んだ。“甘いなあ、うめぇなこいつ……ん、この感じは……”そうだテルセイラ島で飲んだアソーレスワインの味だ。ポルトワインは、醸造の途中でブランデーを加え発酵を止めることにより保存性を高めたワインだが、同時に甘みも加わることになる。大航海時代が生んだ製法だが、アソーレスでも同じ製法をしているのだろうか。

 お土産に試飲した赤を一本購入。この時入場料がそのまま購入金額に補填される。つまり買った人は入場無料ということだ。ワインの他にもサンデマングッズがたくさんあり、ポルトガル土産にお薦め……黒マントマークが気に入ればの話だが……。

観光バス

 雨脚が強まる。たくらんでいたワイン倉庫のハシゴはあきらめ、バスに乗ることにした。昨日チケットを買った、ポルト周遊観光バスだ。バスは決まったコースを1時間に1本の割合で周遊していて、乗り降り自由、日本語のイヤホンガイドありとの事だが、よく考えると結構不便だ。そんなに都合良く1時間単位で観光できないし、バスが時間どおりに来るとも限らない(乗り過ごすとまた一時間待ち)。今回はたまたまドン・ルイス一世橋を渡ってくる車体が見えたので丁度良く乗り込むことが出来た。

 バスは2階建てで、2階は屋根の無いオープンデッキになっている。さすがにこの天気で2階に行く人は居ない。空いていた席に座り、イヤホンをパネルに差し込む。ん、音でねぇじゃん、こいつ。周りを観察してみると他にも音の出ない席があるらしく、お手上げポーズをしている外人が居る。どうやら1/3程度は故障しているようだ。次の停留所で降りる客が居たのでなんとか日本語の解説が聞ける席に移動することが出来た。後から乗り込んできた人は音が聞けないばかりか、席が無い人もいる。

 降りるのも面倒くさくなったので、このまま一周することにした。半分居眠りしながらのポルト観光。昨日夕食を食べた“カルロス・アルベルト”の辺りを通るが、結構渋滞が激しい。一応見どころは網羅しているし、イヤホンガイドも適切な内容で、途中下車しない“ポルト一周観光バス”だと思えばまあ高くはないかもしれない。天気が良ければ2階席も面白いだろう。特に、西部高級住宅地の町並み、半分川にはみ出した道路から見るドウロ川の眺めは面白い。

 夕食は近場で済ます。川沿いに立ち並ぶレストランやカフェの中の一軒に、ポルト名物の牛のもつ煮込みTripas à moda do Portoをメニューに掲げていた店があった。勇んで入るが空振り、本日はありません。仕方がないので適当に注文、特に印象のない晩飯となってしまった。昨日出会った、謎の女性の言葉「ポルトは坂を上がるほど、安くて旨い店がある」は本当のようです。


09/13 end


Photo
ドナ・マリア・ピア橋puffin ドナ・マリア・ピア橋
橋台部分の曲面の重なりが美しい。近代的な設計のフレイショ橋の方が弱々しく見える。
ドン・ルイス一世橋puffin ドン・ルイス一世橋
ケーブルカーの車窓から。
2001年1月6日puffin 2001年1月6日
サンデマンの入り口に過去の洪水を示す印がある。2000年以降は、一番下の一枚だけ。洪水の時は、ワイン樽を高い所に運び上げるそうです。
サンデマンpuffin サンデマン
試飲用のワイングラス。
サンデマンの廉価品が成城石井にありました。
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