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2006portugal 09/09
サン・ミゲル島へ

 窓を開けると、湿り気を含んだ風が感じられる。天候が崩れるのだろうが、雲の流れが速い。大西洋を臨むソファーに座り、昨日町で買っておいたパンで朝食を済ます。タクシーで空港に向かう。10時50分発のサン・ミゲル島São Miguelへの飛行機を待つ。滑走路からは、次々と戦闘機が飛び立っている。売店をのぞいてみる。なんと、昨日見かけた青い箱……グラシオーザ島のお菓子が積まれている。もちろん一箱購入。

 サン・ミゲル島、ポンタ・デルガーダ空港Ponta Delgada(PDL)までは、東へ向かって40分、ポルトガル本土に少し近づく。レンタカーを借りると昼飯は抜きにして出発……明日の早朝にはこの島を去ることになるので時間がない、朝の残りのパンとグラシオーザのお菓子ですませる。アソーレス諸島で一番の景勝地、セッテ・シダーデス湖Lagoa das Sete Cidadesへ向かう。しばらくは南側の海に近い道を西に向かって走るが、外輪山の峠に向かって高度を上げていくと次第に涼しくなってきた。テルセイラ島と同じくアジサイが多く植えられており、ここら辺りはまだきれいに咲いている。

神々の庭、そして神の祝福

 小一時間ほどで峠に着いた。風が強く寒い。少し高くなったところには、マニアが喜びそうな廃墟となったホテルがある。セッテ・シダーデス湖は、いわゆるカルデラ湖で、「青の湖」と「緑の湖」がひょうたん型につながり横たわっている。この湖の名前には伝説があるそうだが……「昔々、王女様がやってきて……」……大航海時代以降に入植した歴史の浅さを考えると少しウソクサイ。それはともかく峠から眺める湖の景色は圧巻であった。緑の外輪山に囲まれた青い湖が、まるで誰かが作った箱庭のように思える。小高い位置から見下ろしているので、自分がその作者のようにも思えてくる。もし、有史以前に人が住み着いていたならば、ハワイや他の太平洋の島々と同じく素晴らしい文化が育ったことだろう。

 湖へ向かって、花が咲き乱れるアジサイロードを下る。東京近郊であればお花見で大渋滞になりそうだ……ちなみに今日は土曜日だ。湖のそばの町に着く。同じく東京近郊であればペンションが林立し足漕ぎスワンが浮かんでそうだが、酪農が主な生計であると思われる小さな町は静かだ。時間に余裕があれば湖から外輪山にかけてのトレッキングがおもしろそう。

 カルデラを抜け、北側の海岸線に出る。東へ向けてドライブ。次の観光地に向かうには中途半端な時間になり、サン・ミゲル島で2番目に大きな町、リベイラ・グランデRebeira Grandeでのんびり過ごし、夕食の時間まで待つことにした。幾つかの古い小さな町を通過し、リベイラ・グランデに到着。海岸沿いにあるお目当てのレストラン……アラ・ポテAla Bote、丹田いづみ著「ポルトガル 小さな街物語」より……はすぐに見つかった。都合のいいことに公共の駐車場も目の前にある。

 白壁が美しい、典型的なアソーレスの町。少し高くなった位置に教会が見えたので行ってみる……何処の町も、教会が一番見応えがある。すると、驚いたことに、今まさに結婚式が行われていた。日本でよく、なんちゃって教会式結婚式……まあ、うちの夫婦もそうだったな……に出席することはあるが、由緒正しい、本当のカトリック結婚式を見るのは初めてだ。最後尾で勝手に参列。

 金泥細工が美しい祭壇を背に、式はおごそかに進む。島に来て初日に聞いたファドといい、アソーレスの旅は予期しないアトラクションに恵まれている。時々参列者一同がひざまずいてお祈りを捧げる。ひざまずく時に膝を乗せる台が座席に付いているのは発見だ。式は無事に終わり、新郎新婦は教会の前の石段で出席者に囲まれライスシャワーを浴びる。おめでとう、そしてお幸せに、通りすがりのものですが、お祈りいたします。

カニカマ・カタプラーナ

 5時になったので、少し早いが海辺のレストランに行くとしよう。さあて何を食べるかなあ……って、看板をよく見るとオープンは19時。げげ、待ってらんないなあ、仕方がないので今日のホテルがあるポンタ・デルガーダの町に戻る。北側の海岸から南の町へ島を縦断、西半分を一周(半周?)した事になる。アベニーダAvenidaホテルは町の中心部、そして海岸沿いにあり、散策するには申し分ない。駐車場に車を入れ、晩飯を探して路地をうろつく。“ここぞ”という店が見つからないまま、おなかが空いてきたのでポルトガル名物、カタプラーナ鍋Cataplanaの店に入った。注文したのはシーフード・カタプラーナ。

 カタプラーナ鍋とは、銅でできた中華鍋を2つ、空飛ぶ円盤のような感じにとじ合わせたもので、熱伝導性が高いため全体が均一に煮えるらしい。昔は職人が銅板を叩いて作っていたが、今はプレス加工されたものがたくさん売られている。ワインを飲みながら待っていると金色に輝くUFOが、もとい、カタプラーナ鍋がやってきた。留め金を外し、ふたを外す。アサリやエビやカニカマ……、え、カニじゃなくてカニカマ??。まあ「(フランスの)シャンゼリゼでカニカマが大流行」なんてニュースを聞いたことがあるのでヨーロッパではオシャレな食材なのかもしれない。それにシーフードという意味では間違ってはいない。

 気を取り直して、お味の方は……塩辛い。シーフードなので、良いダシが出ていると思われるが、しょっぱくて飲めない。塩加減にも国民性があり、国によって好まれる量は違う(パンを食べればよくわかるらしい)。しかしこれは度を超えている感じがする。なんだか失敗だったなあ、この店。やはり、丹田いづみさん推薦に従ってリベイラ・グランデで食べていればよかったと後悔しきりな、アソーレス最後の夜。


09/09 end


Photo
グラシオーザのお菓子puffin グラシオーザのお菓子
キャラメル風味。Queijadas da Graciosa、直訳すればグラシオーザのチーズケーキ。
セッテ・シダーデス湖puffin セッテ・シダーデス湖
セッテ・シダーデスとは、7つの町という意味らしい。火山の噴火により町が沈んだそうな。
リベイラ・グランデの教会puffin リベイラ・グランデの教会
参列者一同、集合写真。心臓のイルミネーションは夜光るのだろうか、ちょっとシュール。
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