コロセウム
7時起床。朝食はまたまたビュッフェスタイル。嬉しかったのは、クレープをその場で焼いてくれるサービス。焼きたての甘い香りをかぐのはやはり幸せなことだ。
ガベスからはチュニスへ向かってひたすら北上する。大都市を結ぶ幹線道路なので交通量が多い。しばらくは地中海沿いを走るが、ほとんど海は見えない。地平線まで規則正しく植えられた、オリーブの広大なプランテーションが広がる。ほんの少しだけど、にわか雨が降る。海沿いの地は、多少は湿度に恵まれているようだ。
スファックスからまた内陸部に入り、エル・ジェムへ向かう。エル・ジェムには世界遺産に指定されているローマ時代の円形闘技場(コロセウム)がある。お昼過ぎ、無事到着。駐車出来る場所がなかなか見つからなかったが、コロセウムの入り口から反対のところに駐車場を見つけた。すぐに売り子が寄ってくるが笑顔で無視。
石を積み上げて作られた三層構造の巨大コロセウムは、完成していれば(完成しなかったところが悲しい)3万人を収容出来たという。いったいトイレは何処に作られたのか、気になったがよく判らなかった。三層構造の最上段に登ると眼下に町が小さく見える。大きいだけでなんの用も成さないピラミッドではなく、人々の娯楽の為にこれだけの建造物を造った、ローマ人の技術力と文化の高さに“恐れ入りました”って感じだ。しかし、ローマ人が去った後、初日に見たドゥッガの町は歴史から姿を消すし、このコロセウムも完成することはなかった。後から来た者にその技術や文化が継承されることはなかったのだろうか。日本という枠の中でしか考えられない自分には、この国の歴史を理解することは難しい。
暑さにやられたのか、疲れがたまってきたのか、ちょっと妻の体調が悪い。車に戻る。食欲もないようだ。コロセウム前の通りでパン、ヨーグルト、ジュースを買い、車の中で食べた。プラスチックのカップに入った、久しぶりに口にする工場生産品が妙に美味い。乾パンのように堅いパンには閉口したが。
メディナの絨毯屋
今日の宿泊地、カイルーアンには明るいうちに到着した。ホテルはラ・カスバ。カイルーアンのメディナは世界遺産に指定されている。その一角のカスバ(要塞)の一部を買い取り、改装してホテルにしている。中に入ってしまえばカスバであった面影はないが、重厚な造りは5つ星に相応しいたたずまいをしている。
時間が早いので観光案内所に行ってみる。ここは有料で“公式な”ガイドツアーが行われているらしい。オフィスを覗いてみると、なるほど確かに料金表のような物が貼ってある。中で立ち話をしていた男が寄ってきた。2人で10Dで案内してやるという。“公式な”料金は一人10Dらしいので−−お得じゃん−−、それに職員と話をしていたのでそれほど怪しい人ではなかろう、と、安易に誘いに乗ってしまった。
まずは観光案内所の屋上から、9世紀頃の浄水場の跡を眺める。ちなみにカイルーアンは、全くローマの影響を受けていないらしく、この浄水場もこの地にやってきたアラブ人が建設した物らしい。貯水槽、沈澱槽等、機能別に分けられたプールが並び、現代の浄水システムと変わりない。−−アラブ人もやればできるじゃん−−せっかくのローマ文明の遺産を衰退させ、昼間っからカフェに入り浸り何もしない多くの男性を見てきた今の、正直な感想だ。
観光案内所の隣に“公式な”カーペット屋があり連れて行かれる。目の前に次々と広げられるカーペットの数々。しかし鑑賞するよりもいかにこの場を切り抜けるか(ぼったくられないか)で頭の中は一杯。「Very good. but too expensive for me. Sorry.」(素晴らしいけど、自分には高すぎるのよ、ごめんね)」を繰り返しなんとか脱出。いつのまにか席を外していたガイドが戻ってきて「どうだった?」ととぼけた顔をしている。やっぱり“公式な”ガイドを頼まないとダメだったかな。
まずはシディ・サハブ霊廟へ。入場料、2人で9D。なんだ結局一人10Dくらいになってしまった。もう夕方で館内はお掃除モードに入っているが、構わず歩き回る。そういう融通が利くのは“公式ではない”観光ガイドの利点だろうか。おまけに明日も入れるように、チケットの日付は翌日になっている。イスラム建築美を堪能し、異教徒は立ち入り禁止の礼拝堂の中を覗き(最初はダメって言ってたけど、なぜか最後には匍匐(ほふく)前進で入れてくれた)、それなりに楽しい。
10数人の団体とすれ違う。中の一人が赤ちゃんを抱えていて、ガイドの話では割礼が行われたと言うことだ。昔テレビか何かで見た割礼は、有無を言わさずハサミで切り落としていたが、今はどうしているのだろうか。
メディナの中を散策。迷路のように入り組んだ路地を歩き回る。こういったところはガイドが居て心強い。自分たちだけなら写真はおろか、立ち入ることもためらわれただろう。−−やっぱりガイドを頼んで良かった−−と納得した気持ちを萎えさせたのは次の言葉だった。「さっきのカーペット屋は高かっただろう。もっと安いところを紹介するよ」と連れて行かれる・・・。
モザイク画やステンドグラスなど、イスラム文化の粋のような立派な建物に入る。が、ぼったくられまいとする緊張感で気もそぞろ。気持ち的につけ込まれそうで、写真も撮れない。奥の部屋に通され、お茶を出されるが、これも断る。
次々と広げられるカーペット、先ほどの店と同じ光景が繰り返される。確かに値段は安い。おまけにどんどんディスカウントしてくる。1枚200Dだった物が、40Dに。早く脱出したいので、−−この辺で妥協して1枚くらい買ってもいいかな−−と妻を見ると「NO!!」。商売人に何を言われても「NO!!」。強いなあ。
ホテルに戻り、夕食。今日からは夕食は付かないので外で食べても良かったが、少し疲れたのでホテルで済ませることにした。席に着くと部屋番号を聞かれる。食事はいつものビュッフェスタイル。自分で選べるので“外れ”は無いが、いい加減あきてきたなあ。果物の中に、生のナツメヤシの実があった。食べてみると、柿の味。渋柿をかじったときほどではないが、多少渋みがある。どうりで干すと干し柿の味になるわけだ。外は本格的な夕立。この地では、普通なのか、雨期なのか、よくわからないが雨の音と共に眠りにつく。
10/11 end
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