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2004tunisia 10/08
ル・ケフのメディナ

 7時起床。夜中に何度か目が覚めたが(鳥の声はしなかった。暗くなると自然に寝るのか?)、時差ぼけで寝られないということはなかった。それだけ疲れていたということか。鳥の声が心地よい。日本のホテルでもBGMで鳥の声を流したりしているところがあるが、こちらは本物。やはり気持ちよさが違う。朝食は、マフィン、フランスパン、ジュース、ゆで卵、コーヒー、等々。かなり質素。ウエイターがお菓子のような物を皿に乗せてくれる。素朴な味、素朴な甘み。“おめざ”には丁度よい。妻の機嫌もいいようだ。チュニジアのお菓子で、ナツメヤシの実から作るらしい。

 非常食用にマフィンを2つ失敬し朝食を済ませ、ホテル内を散策。たくさんの花が咲く階段状の庭園がある。何処も整備が行き届いている。なかなか良いホテルだ。気分も乗ってきた。やはり旅で一番重要なのはホテルだね。泳いでいる人は見かけなかったが、プールの水もきちんと循環されている。こんな高地で水の便は大丈夫なのだろうか。

 精算を済ませ、とりあえずル・ケフのメディナへ向けて出発。世界遺産を数多く抱えるチュニジアにあってはル・ケフのメディナ(イスラム式の都市に見られる城壁に囲まれた旧市街)は地味な存在だが、せっかく立ち寄った街だから覗いてみよう。車を適当に走らせていたら道がだんだん細くなり、人間とすれ違うのも難しくなる。−−やばい、引き返そう−−と思ったが工事のおじさんが笑顔で誘導してくれるので仕方なくそのまま進んでいると、人間の背丈の何倍もある立派な門の前でついに行き止まりになってしまった。近くに居た人を捕まえて、ガイドブックの地図を見せ「ここは何処?」と身振りで尋ねる。なんとカスバ(メディナの一角にある要塞)の入り口だ。どうりで立派な門構えだ。願ったりかなったりの場所に来た。ここに車を置いて、中を見学しよう。

 カメラを担いだり身支度を整えていると、さっそくガイドらしきオヤジが寄ってくる。言葉がわからない振りをしてしてやり過ごしていたが、写真を撮ろうとしていたらすたすたと近寄ってきて「ここだめ、軍事施設だ、撮影禁止。こっちこっち」と誘導されてしまう。そこまで言われたら小心者の日本人はもう断れない。ここも気持ちよくぼったくられましょう。

 しかしこいつ実は英語がしゃべれないことがすぐにわかった。フランス語の単語と手元のガイドブックからなんとなく推定してついて歩く。ぜんぜんガイドじゃないじゃん。でもとても愛想が良く、ビデオカメラに写った自分の映像を見て喜んだり、進んでカメラマンになってくれたりそれなりに楽しかった。しかも最初に撮影禁止と言っていた場所でも平気で撮影をさせてくれる。なんだかだまされた気もする。

 ル・ケフのカスバはこぢんまりとしているが保存状態(もしくは修復状態)も良く、イスラム式の砦の様子がよくわかる。砦の高いところに立てば、斜面に沿ってなだらかに続くメディナの様子やかれこれ2,500年の歴史を持つ城壁が一望できるし、街自体が小高いところにあるので遠くの眺めもよい。まあ日本にある昭和になってから建てられたような半分秘宝館になっているお城よりははるかに面白い。だが断言できる。ガイドは要らない。

 一通り周り終わる頃には他のガイドも出勤?してきて「ジャポーネェ?オー、ジャポーネェ、ナカータァ、ナカータァ」とご機嫌取りのごとく声をかけてくる。噂には聞いていたがこの反応はいったいなんなんだ。いくらサッカーファンでもフランス人を捕まえて「オー、ジダーン」なんていう日本人は皆無だろう。

 ガイド料として10Dを払うと(明示的に金額を指定されたわけではなく、なんとなく払ってしまった。最初に決めないのが悪いのだが、値段を聞いてもっと高い金額を吹っ掛けられても嫌なので、気持ちよくぼったくられる原則に従い払ってしまった)恐縮した感じで、ガイド小屋にあったハーブの一種、セージを少し分けてくれた。

 ハーブの香りをかぎながら、しばしメディナを散策。なぜかそこいら中、道路工事をしている。ローマ時代の浴槽に向かうが迷路のようでよくわからない。軍服のような装いのおじさんに道を尋ねるが、まったく言葉が通じない。少しはにかんだような顔で、それでも一生懸命何かを説明してくれる。遺跡見学はあきらめることにしたが、気持ちの良い一時だった。チュニジア旅の心得その2「声をかけてくる者は90%お金目当て。声をかけた者の90%は良い人」。通りすがりの、恐らく通学途中の子供たちに先導してもらいカスバに戻る。元気な子供たちはこちらを見てひそひそ話をしては笑いまくり。

チュニジアの警官は暇らしい

 ル・ケフからはアルジェリアとの国境に沿って一路南下。一山越えれば隣の国という日本には無い感覚。今日の宿、タメルザを目指す。周囲の景色がだんだんと乾燥していくのがわかる。巨大なサボテンにこぶし大の実がたくさん付いている。多くは赤く色付き、収穫された実は集配のトラックを待っているのか、売っているのか、かごに満載されて道ばたに並べられている。

 まだ余裕はあるが早めに給油をしようとessoエッソの看板のガソリンスタンドに入る。ところがここはディーゼル燃料しかなく、ガゾイル(ガソリン)があるのはここから100キロ先の町だという。わざわざ100キロ先までの、非常にわかりやすい地図を書いてくれた。途中に分岐は3つしかない。そして確かに100キロ先にはもう一つのessoが存在した。

 さて、問題の昼飯の時間が迫ってきた。昨日の件があり、妻は「もう何も食べない、100歩譲ってフランスパンのみ」と宣言した。小さな商店が続く通りで車を停め、パン屋を探す。途中、チキンの丸焼きをしている店があった。美味しそうな香りが漂う。パンも売っているので、ここで妥協。チキンを半身とポテトフライのセット、直径25センチくらいの丸くて平べったいパンを買う。車に戻り、しばらく走ったところの木陰で休憩。パンはどっしりとした重みでなかなかの噛み応え。チキンはハーブをからめた香草焼きでなかなかの美味、妻も納得の美味しさ、って食べてるよ。食べないんじゃなかったの?

 途中、道ばたにパトカーを発見。なんだかわからないが、警官が停まれと合図している。素直に停まると、続いて後ろのトラックも停められた。何事かと窓から後ろを振り返っていると、今度は行けと手を振っている。よくわからん。

 また小一時間走ったところで、警官に停められる。今度はにこにこして話しかけてくる。でも言葉が通じないので「ボンジュール、ジャポーネェ?、サバァ、ショクラン、センキュー、グッバアイ」とわけのわからん会話で話が終了。こいつら暇つぶしに車を停めているのだろうか。それにしても警察官の姿はよく見かける。時々小さな町に入るといきなり制限速度が30キロに落ちてしまうのだが、そこで無理な追い越しをしたりするとすぐに捕まっていた。こんな田舎じゃなく、チュニス市内で取り締まって欲しいのだが。

砂漠のリゾート タメルザ・パレス

 ガフサを過ぎしばらく西へ走った後、トズールに向かう主要道路を離れて山道に入る。周りの風景はもう完全に緑からは見捨てられ、ショッカーが出てきて戦う採石場の跡のような荒れ地が続く。悪路を覚悟していたが、道はきれいに舗装されている。砂漠というと、大きな砂丘がうねうねと地平線まで続く風景を思い浮かべるが、ほとんどの場合、多少の植物が生えた荒れた大地だ。ここはもう完全に砂漠だ。不思議なことに、こんな大地でも数10キロおきに集落がある。遠くで降った雨(ここらあたりだと隣国アルジェリアで降った雨が)地下水となって流れ着き、オアシスを作るそうだ。

 そんなオアシスの町の一つ、タメルザにあるのが今日の宿、タメルザ・パレスだ。18時、チェックイン完了。さすがチュニジア国内でも有数のリゾートホテルだけあって、従業員の身のこなしも洗練されている。部屋に通されると、すかさずウエルカムドリンクも届けられる。普通に泊まれば一泊300D以上、今日の昼飯の100食分以上という値段の世界があることを、通り過ぎる村で見かけた、ロバに乗った羊飼いの少年は知っているのだろうか。

 窓際のテーブルに、枝付きのままの干したナツメヤシの実が置かれていた。ナツメヤシは、多くの日本人が一般的に想像する砂漠のオアシスの風景に生えている例のヤシの木で、親指くらいの大きさの実が鈴なりに付く(なんて話はチュニジアに来ると決めてから知ったのだけど)。丁度10月が収穫期というから今がまさにそうだ。ちなみにお好み焼き専用ソースとしてあまりにも有名な広島のオタフクソースは、原料にこのナツメヤシの実(デーツ)を使っている。早速食べてみる。うーん、これは干し柿?。

 夕食までの間、ホテル内を散歩。パレスと呼ぶにふさわしい豪華な作りだ。ホテルの前は枯れた川で、対岸は廃墟となったタメルザの村。数十年前のことであるが、大洪水に飲み込まれ今は捨てられた村を、なんと強力な投光器でライトアップして浮かび上がらせ、幻想的な雰囲気を演出している。星空が美しい。天の川らしき物もうっすらと見える。思いのほか多くの人工衛星が飛び交っている。

 ホテルのレストランで夕食。今日から3泊は、ホテル代に夕食が含まれている。べつにバトゥータ・ボヤージュにリクエストしたわけではなく勝手に組み込まれていたのだが、なぜそうなったのかよくわからない。どちらにしろここタメルザでは唯一と言っていいホテルなので、ここで食べるしかないのだが。

 前菜、メイン料理、デザートの3品。それぞれいくつかの中から選ぶが、肉か魚かくらいしかわからないので適当に注文。チュニジア独特の香辛料であるハリサを効かせた辛い料理を想像していたが、観光客向けにしてあるのか、まったく辛くない。チュニジア産ビールのセルティアと一緒にどれも美味しくいただけた。デザートの、デーツのムースは激甘だったが。


10/08 end


Photo
ニッサン・パトロールpuffin ニッサン・パトロール
ホテル・ル・ピンを背景に。スズキ・ジムニーに始まって、3年連続で四駆を借りました。
ル・ケフ カスバpuffin ル・ケフ カスバ
道案内の子供達。四輪駆動車は子供達の羨望の的です。
チキンの香草焼きpuffin チキンの香草焼き
何処の町でも売っています。安くて外れのないメニューかもしれません。
タメルザの廃村puffin タメルザの廃村
右手にはナツメヤシのプランテーションが広がる。また洪水が来たら流されそうだけど大丈夫なの?
タメルザ・パレスpuffin タメルザ・パレス
プールの水はどっから持ってくるんだあ?
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