6時起床。ホテルで迎える朝とは違った爽やかさが漂う。この空気感の違いは何なんだろうか。B&Bとか、民宿とか、ユースホステルとか、そしてゲストハウスとか、ホテルとは違う居心地の良さを求める旅行者が少なからず居るのもうなずける気がする。いるかおさんも起床して、朝ご飯の準備中。「それじゃあ、ちょっくら行ってきまあす」。
ヒロHiloへの道は、少し渋滞。ハワイ島でも通勤渋滞があるんですねぇ。空港近くのショッピングモール、プリンス・クヒオ・プラザPrince Kuhio Plazaに入り、まずは朝食。ジャンバ・ジュースJamba Juiceのアサイイボールとスターバックスの菓子パンとコーヒー。アサイイAçaí(ah-sigh-ee)はブラジル原産のベリーの様な物で、アサイイをスムージーにしてその他のフルーツとグラノーラを混ぜたのがアサイイボール。なんだか健康的な朝食です。
今日はまず朝一で車の交換をしなければならない。空港でハーツHertzの車を返却し、タクシーでハーパー・カー&トラックレンタルズHarper Car and Truck Rentalへ(迎えに来てもらう事も出来るけど、前回待ちぼうけで不安だったので)。ほどなくして、特殊車両……トラックとか、冷凍車とか、そして up to the top of Mauna Kea!! マウナケアへの車……が並ぶ事務所に到着。受け付けは日系人のおばちゃんで、日本語英語がちゃんぽんな説明で契約完了。念入りな車体のチェックをし、やっとキーが渡される。フォード・エクスプローラー、アラスカ以来ですから4年振りですかあ、相変わらずアクセルは重いのか?、はい、重いですねぇ。それじゃあ出発です。
11号線を再び南下。小一時間でハワイ火山国立公園Hawai`i Volcanoes National Park、キラウエアKilaueaに到着。ビジターセンターに駐車して、ボルケーノ・ハウスVolcano Houseへ。懐かしいですねえ、前回はここ(……の一番安い部屋)に一泊しました。ホテルの売店を抜けると、目の前に巨大なカルデラが。前回は静かなフライパンでしたが、鍋の端、クレーター部分から噴煙が上がってます。凄いです。今年の5月辺りから活動が始まったらしく、現在カルデラ内のトレッキングコースと周回道路Crater Rim Driveの一部が通行止めになっている。
場所を変えましょう。周回道路をジャガー・ミュージアムJaggar Museumへ。現在最も噴火口に近付ける場所だ。おっとその前に、お昼ご飯にしましょう。国立公園の外、ボルケーノ・ビレッジVolcano Villageで前回見つけたパンケーキ屋さんを探す。たしかボルケーノ・ストアーの隣……あれ、なんか違う店になってます、残念。仕方がないので売店でサンドイッチと巻き寿司を買い、車の中で食べる。
ジャガー・ミュージアム(ジャガーさんが作ったらしい)は、それほど大きな規模ではないが、火山に関するちょっとした展示がある。そして展望台からはハレマウマウ・クレーターHalema`uma`u Craterの絶景が。直径1キロ程の窪みの端から煙が上がっていて、たなびく白い噴煙が時折赤く染まるのも確認できる。夕暮れ(マジックアワー)まで粘れば、美しい光景が見られるのは間違いない。が、今日の本番はここではありません。地球の息吹をしばし堪能すると、記念写真を撮るための隙間を探し目を光らせている他の観光客に場所を譲り、撤収です。
ハワイ火山国立公園の中で一番の見所は、なんと言ってもチェーン・オブ・クレーター・ロードChain of Craters Road。海岸付近へ下る道を走って行くと、途中で黒々とした溶岩に遮られ行き止まりとなる。溶岩の下には集落があり(あった)、今でもその痕跡を辿る事が出来る為、火山活動の凄さを感じたい観光客が大挙して来る。前回の来島では“溶岩トロトロ”を目的に訪れたが結局観られずに退散し、夫婦喧嘩となってしまった曰く付きの場所でもある。その行き止まりの道だが本来は東に向かって続いていて、そのまま進めばパホアPahoaの町、そしているかおさんのゲストハウスに戻る事が出来る。話が長くなったけど、今日の本番は、パホア側からの行き止まり、カラパナKalapanaと呼ばれる場所だ。
キラウエアを後にし、まずはパホアに戻る。カラパナ“開場”は夕方5時らしいので少し空き時間が……。そんな時は、“へなちょこポイント”、へなちょこ・しゅん著の「行くべしハワイ島 見るべしハワイ島」です。島中隈無くガイドされているので何処に居ても必ず何か紹介されています。パホアの近くには溶岩樹公園Lava Tree State Parkなる物が在るので寄ってみましょう。幹線道路(11号線)から外れたパホアの町、そこからさらに外れた森の一角が州立公園となっている。意識して探していないと見過ごしてしまう案内板に従うと駐車場に行き着く。先客は1台だけ、静かな静かな公園だ。
遊歩道は整備されているが、周囲は森。しかし溶岩の深い割れ目がそこここに見受けられる(柵は無いので落ちないでね)。“溶岩樹(型)”と言うのは、元々生えていた木を押し寄せてきた溶岩が被い中の木が焼失、溶岩が木を包み込む形に冷えて固まった物だ。公園の所々に高さ1〜2メートル程の溶岩の塊がオブジェの様に立ち並んでいる。低い物は、お地蔵さんの様に見えたりもする。
実はここと同じ景色は日本でも見ることが出来る。“富士の樹海”だ。どちらも同じ成り立ちで出来ている森だ。だが千年をかけて現在の姿となった青木ヶ原と違い、ここはまだ数百年。それでも立派な森になっているのはやはり温暖な気候による植生の違いだろう。モンステラが樹木に絡まり、巨大な葉が茂っている。鉢植えでしかお目にかかれない日本と違い、桁違いの大きさだ。ゆっくり歩いても30分程の小さな公園。ミシュラン3つ星(それを見るためだけに旅行する価値がある)とまでは言わないが、最近流行のカラパナに行くついでにはぜひ寄ってみてください。
パホアのマラマ・マーケットMĀLAMA Marketで晩飯を仕入れ、いざ、カラパナへ。パホアから数十分も走ればチェーン・オブ・クレーター・ロードの終点と同じ、黒々とした溶岩台地に行き着く。しかし監視小屋まで2車線の立派な舗装道路のチェーン・オブ・クレーター・ロードと違い、こちらは舗装道路が溶岩に覆われ寸断されている。その溶岩に上に「突貫工事でなんとか間に合わせました」的な、もしくは「どうせまた“流される”ので適当でいいでしょ」的なアスファルトが敷かれていて、寸断された道を繋ぎなんとか監視小屋までの道を確保している。うーーん、アイスランド的なワイルド感溢れる道、これ普通乗用車だと怖いかも。
4時過ぎ、終点に到着。まだまだ先着10名に入れるくらいのオープン待ち行列(って実際に並ぶ必要な無い)。クーラーを効かせた車の中で待機していると、飲み物や土産物を売る屋台(ワゴン車)がだんだんと増えていき、なんだかお祭り気分。椰子の実ジュースが飛ぶように売れている。ホットコーヒーは流石にこの暑さでは売れ行き今ひとつ。
5時きっかり、ゲートが開くと待ちわびた多くの人がなだれ込む。ちなみに此処はハワイ火山国立公園の外なので入場料は要らないけど、多少の心付け(ドネーション)はしておきましょう。溶岩の上に付けられた印を辿り……不安定なだけでなくガラス状の溶岩石も有るのでスニーカー必須です……海岸へ向けてぞろぞろと歩く。20分程で、ロープの張られた規制線の端まで到着。ここまでかあ、ちょっと遠いなあ。
カラパナに来る人のお目当ては、“オーシャン・エントリー”。海になだれ込む溶岩の姿が……うーーん、ちょっと見えないなあ、残念な事に今日の溶岩の通り道は崖の向こう側、赤い溶岩が荒波とせめぎ合う姿を見ることが出来ません。日々流れを変えるので、運次第です。
それでも海に落ち込む部分からは豪快な白煙が上がっている。撮影ポイントを三脚で陣取り夕暮れを待つ。たなびく煙をぼうっと眺めていると、周囲はいつのまにか人だかり、数100人が同じ方を見つめている。ハワイ島に来てからずっとそうだが、今日も時折雨がぱらつく。海の上には、大きな虹。
周囲が少しずつ暗くなる。すると、白く見えていた煙が溶岩の照り返して赤く染まるのが確認できるようになり、周囲からも歓声が上がる。また、双眼鏡や望遠レンズで覗くと、赤い溶岩が吹き上がっているのも見える。夕暮れから日没までの短い時間、皆ビデオカメラを回し、シャッターを切るのに忙しい。先ほど虹が出ていた方角には、なんと、南十字星が。
午後8時、レンジャーから撤収命令が出る。南十字星を背に、溶岩の上に付けられた反射板を目印に駐車場まで戻る。ドリンクや土産物を売る車が祭りの夜みたいでなんだか楽しい。結局今回も“溶岩トロトロ”は見られなかったが、違う一面を見る事が出来たのでまあ満足。“溶岩トロトロ”は、又の機会に取っておきましょう。
帰り道、溶岩の中に取り残された家から灯りが見える。実はこの辺り一帯は私有地になっていて、その為カラパナ観光は5時から8時までに制限されている。「私有地って、誰か居る(暮らしている)のか?」と疑問だったが、どうやらちゃんと住んでいるらしい。溶岩で流されてしまえば保険が出るが、中途半端に取り残されると残念な事になるという話しを聞いた事が有るが、そういった人々なのだろうか。ライフライン(電気、ガス、水道)はどうなっているのだろう。
06/23 end
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