6月5日、オーストラリア、新型インフルエンザ、感染者数 1,000 人突破。
メキシコに端を発した新型インフルエンザ(通称、豚インフルエンザ)騒動は世界を駆けめぐり、ついに今年の旅行予定先、オーストラリアで継続的な感染拡大が始まってしまった。こうなると、カラオケボックスに集うお気楽高校生とは違って、勤め人としては万が一の場合の社会的影響……「あいつ1週間休暇取った上に、さらに1週間病休かよ」……を考えなければならない。予約をしておいた航空券とレンタカーをキャンセル。フェアリーペンギンのパレードとか、「酔って♪コアラに♪パンチ♪♪」とか、数ヶ月かけて練りに練った計画が、水泡と化してしまった。
しかしせっかく調整した有給休暇、やっぱりどっか行きたいよなあ………って事で、5分で計画が立てられて“比較的”安全な唯一の地、ハワイ島に行くことにした。幸いなことに、念願だった
すばる望遠鏡の見学会も予約できたし、出発直前にはなんとか格好の付く予定表が完成。「本土(北米)はともかく、ハワイは大丈夫っスよ、はははぁ」と根拠の無い理屈で周囲を誤魔化し、いざ、出発。
成田、20時55分発、ノースウェストNW22便、
ホノルルHonolulu行き。窓側カップルシートはともかく、通路に挟まれた4人掛けシートはがら空き。こんなに空いている飛行機は初めてだ。インフルエンザの影響か、それともノースウェストのサービスがしょぼいからか。アルコール類が有料になっていたのには驚いた(しかも7$=700円)。量を飲む人は、免税品のウィスキーを買った方がお得かも。
機内エンターテインメント・システムはそこそこ充実していて、日本映画2本を含む多くの映画が日本語&オン・デマンドで楽しめる。ちなみにソフトウェアは親会社となったデルタ航空仕様に入れ替えられている。「旭山動物園物語」を鑑賞。飼育員のがんばりは賞賛できますが、結局地方の動物園って、市長の気まぐれでどうにでもなるって事なのね。
日付変わらず午前9時、順調な飛行でホノルルに到着。暖かいが、暑すぎるほどではない。連絡バスに拉致られ空港内を移動し、入国審査。「いくら持ってる?」変化球な質問を無難にこなし、無事入国、かと思っていたら落とし穴が……。
「エスタの登録はした?」
「は?えすたあ?、なんだっけ……あっ、」。そう言えば今年からそんな制度(電子渡航認証システム
ESTA)が始まっていたような……。「いや、そのう……してません」。あっちゃー、と思ったが「まあいいや。次回から忘れないでね」と、あっさりOK。入国できたのは嬉しいが、そんなんでいいのか?アメリカ!!、いやそもそも申請していないと飛行機に乗れないのでは?、ノースウェストがなんとかしてくれていたのか?……よくわからん。
国内線ターミナルに移動し、ハワイアン航空の
ヒロHilo行きを待つ。インフルエンザ騒動の混乱を想定し乗り継ぎに余裕を持たせていたのだが、あっさり入国してしまったので4時間待ち。売店をゆっくりと冷やかした後の、ハワイで最初の食事は
ラハイナ・チキン・カンパニーLahaina Chicken Company。いわゆるチキンの丸焼き屋さんだが、しっとりとした焼き加減と塩加減が予想以上に美味。付け合わせに選んだ野菜はいかにも「冷凍食品です」って感じで失敗。
13時30分、満席のボーイング717で
ヒロへ。搭乗口が分からずぎりぎりに行ったら窓の無い最後列になり、しかも巨漢に挟まれ身が細る思いで1時間我慢した以外は順調なフライトで到着。6年ぶりのヒロ空港は、記憶の中の姿と全く変わらないたたずまい。まずは予約しておいたレンタカーを受け取りに、
ハーツHertzのカウンターへ。無料のトロリーバスが金持ちギャルを狙って徘徊しているオアフとは違い、ハワイ島は“足”が無いと行動できない。今日もニコニコ、ハーツ・ゴールド会員な俺様は予約確認書を見せるだけですぐにキーがもらえる。しかし「コンパクト」を予約しておいたはずが、出てきた車は
日産ムラーノ。これって、でかくねぇ?、両隣に駐車されている車と比べても、タイヤからして大きく、車高も高い。勝手にアップグレードされても、ガソリン代は自分持ち。
車体のでかさにビビリながらゆっくりと出発。今日の予定はホテルへ向かうだけだが、時間が早いので少し寄り道(奥様ご機嫌取りタイム)。
バニヤン・ドライブBanyan Driveを走り「
ヒロ・ハワイアン・ホテルHilo Hawaiian Hotel、泊まったよね〜」しばし思い出に浸りながら、
リリウオカラニ公園Liliuokalani Gardens Parkを横切り、
カメハメハ通りKamehameha Ave.に車を止め、ヒロのダウンタウンへ。ここに、フラ業界では超有名(らしい)なデザイナー、
シグ・ゼーンsig zaneの本店がある。「え、店舗改装中?」みたいな、「おしゃれ感、かもしてます」ディスプレイを横目に重たいドアを開けると、ちょっと和風な、落ち着いた空間が広がる。うーーん、確かにチャイナ服のメイドさん、もとい、メイド・イン・チャイナな派手派手アロハを売る店とは一線を画する高級感が感じられる。素人には「え、これってどの辺がハワイ?」って感じのデザインも多いが、プロが見ると「シグ・ゼーンか、やるね」ってすぐに分かるらしい。まあ、お土産に買えば喜ばれることは間違いないだろう。ただし、店頭に並べられているのはハワイアンなサイズ(Lとか、2Lとか、3Lとか)が中心なので、よく確認しましょう。
物欲を満たしたところで、いよいよ今日の目的地、
ホノカアHonoka`aへ向けて出発。はい、映画『
ホノカアボーイ』の舞台となった小さな町です、ロケ地巡りです、ミーハー根性丸出しです。ダウンタウンから島1周道路に戻ると、「ホノカアはこっち、40マイル」と大きな道路標識がある。映画にしても、原作にしても、とんでもない田舎町みたいなイメージで描かれているが、交通の指標になるくらいだからそこそこ大きな町かも。いや、他の町がそれ以上に小さいという事か?。
とりあえず、ひたすら北上。ちいさな鳥が、道路に落ちた枝だか木の実だか花弁だか、なにかを拾おうとちょろちょろするので轢きそうになる(実際に轢かれている姿も目にする(泣))。でもそのたびに減速して避けているときりがない事がわかってきて、だんだんと気にならなくなって来た頃、ホノカアの町に到着。島1周道路を外れ、
ワイピオ渓谷Waipio Valleyへ向かう道に入る。1930年代から時間が止まったような町並みが現れる。この町で唯一(らしい)のホテル、
ホテル・ホノカア・クラブHotel Honoka`a Clubは、すぐに見つかった。
外見からすると平屋のように見える小さな、古びたホテル。入って右側にオフィスがあり、年配の女性が笑顔で迎えてくれた。日本からの客が嬉しいようで、「『ホノカアボーイ』見た?いいわよねぇ。それから、日本映画のあれ見た?『Departures』。ほら、アカデミー賞取ったでしょ」とまくし立てる。アカデミー賞取った日本映画って、何だっけ?。「ほらあれよ。死んだ人に、化粧とかする……」。あああ、『おくりびと』ですか、ご免なさい、見てません、とは言えず「ああ、あれね、見ました、見ました、良かったです」と社交辞令な会話が進む。
部屋は、2階(3階かも)の14号室。太平洋を一望する抜群の眺望。冷暖房は無いようだが、網戸越しに通る風が涼しく心地よい。風呂はシャワーだけだったり、洗面台はお湯が出なかったり、上下にスライドさせる窓は閉まりきらなかったり、蟻がはっていたり、古いなりの作りだが、別にリゾートホテルを期待していたわけでは無いので問題はない。ただ
JALパックで来るような人には「やだーーー」て事になりそう。
買い出し&お食事どころ探しに町へ。ワイピオ方面に歩くと直ぐに、はい、ありました、伝説の映画館、
ホノカア・ピープルズ・シアターHonokaa Peoples Theatreです。昔々、映写技師の手伝いで瀬戸内海の島を巡ったこともあるかつての映画青年は、異国の地の映画館なのになんだか懐かしさを感じ、不思議な気分。
スーパー、
TKSでお買い物。最初、ちょっと勘違いしたのだが、ヒロの有名な
KTAではない。こちらは“T・カネシロ”さんのお店、あちらは“K・タニグチ”さんのお店。野菜のショーケースの下にサンダルが売られていたり、ローカル感満載の品揃え。アメリカンサイズな品々に、でかっ、とお約束な突っ込みをしながら不足していたアメニティグッズを買い揃える。
夕食は、
ブレインズ・ドライブ・インBlane's Drive Inn。ドライブ・インと聞くと、大きな駐車場があるファミリーレストランの様な物を想像するが、実にこぢんまりな、オープンエアーなファーストフードと言った感じ。悪ガキどもに荒らされて清潔とは言い難いテーブルが並んでいる。ロコボウル(ハンバーグ、サニーサイドアップな目玉焼き付き)、サイミン、ミソスープを注文。うーーん、どれもイマイチ、イマニ、イマサンくらいの出来映え。営業時間が長いので使い勝手は良いと思うが、心を満たす味ではない。
日が沈むと、ハワイ島はオレンジ色に包まれる。天体観測に極力影響を与えないように、街灯は全てオレンジ色だ。幾つかの飲食店を除けば静かなホノカアのメインストリートにあって、映画館だけが、白い光で明るく輝いている。今日の上映は、『
ANGELS AND DEMONS』(日本題『天使と悪魔』)。人口数1,000人の小さな町が、今宵、陰謀に包まれる……。