5時30分、起床。早朝の
ホノカアHonoka`aを散策。小さな町の朝は意外と早く、昨日夕食を食べた
ブレインズ・ドライブ・インBlane's Drive Innなど、モーニングを提供している店もすでにいくつか開店している。通りでは朝市の準備が始まり、色とりどりの野菜や、南国の花が並べられている。直径20センチくらいの、バナナの葉で作った鉢に色鮮やかな花をアレンジした物を買ってみた(持って歩くのは少し恥ずかしい)。
TKSから山側に歩くと巨木が立ち並ぶ大きな公園
Honokaa Parkがあり、散歩にはちょうど良い。
ホテルの朝食はパスし、
ヒロHiloへ。土曜日の朝は大きなマーケットが開かれるので、世界ふれあい“食べ歩き”と行きましょう。午前8時、昨日買い物をした
シグ・ゼーンsig zaneのそばに車を止め、
ヒロ・ファーマーズ・マーケットHilo Farmers Marketの開催される
マモ通りMamo St.へ。早くから賑わってますねえ、色とりどりの野菜に混じり、南国のフルーツが盛りだくさん。そしてチマキ、生春巻き、海苔巻き、スパむすびetc……と、ハワイで融合するアジア文化の食事が楽しめる。商売人の姿を見ると、フィリピン系が多く見受けられる。フルーツの切り売りをしている屋台で、かなり年配の日系人おじいさんに日本語で話しかけられた。「これはね、まだ青いマンゴー。少し酸っぱくてね、塩を付けて食べるの。子供のころはおやつだった、タダだったからね」。おすすめに従い、
Crunchy & Sour Mango(カリカリで酸っぱいマンゴー)を購入。
他にちまき(ココナッツ味で餅米とバナナを蒸したタイ料理)と生春巻きを買い、マーケット横のベンチで朝食。初体験の青マンゴーは、漬け物のような感じで、確かに塩を付けて食べると美味しい。“こどものおやつ”と冗談にしていたが、貧しい時代、日本人(日系人)にとっては何となく懐かしい味だったのかも知れない。
マモ通りを挟んで反対側には、アロハシャツや雑貨品を中心とした非食品系の店が集まる。ラウハラ(笹の葉みたいな物を編んだ工芸品)や、なんとなくハワイアンっぽい品々が無秩序に並んでいる。ちょっとチープなお土産を探すには良いかも。うちの奥様は、香りは良いが実用性は低そうなオーガニック石鹸屋に食いついて、6個も買っていた。ロミロミマッサージ屋のテントがあったのには笑ってしまった……いかつい野郎が店番していて客が来るのだろうか。
地域密着型スーパーの
KTAの1号店を冷やかした後、最近のハワイ島土産の定番(らしい)、
ビッグ・アイランド・キャンディースBig Island Candiesへ。「まだ10時前だけど?やってる?」なんて心配をよそに、大きな駐車場には次々と観光バスが止まり、日本人観光客が送り込まれてくる。店に入るといきなりコーヒーと試食品のサービス。いいねぇ、食後のコーヒーは。店舗は工場と隣接していて、ガラス越しにコンベアーが並んでいるのが見える。原料から製造工程まで全ての段階で高品質を売りにしているだけあって、どの機械もピカピカに輝いている。もっとも今日は土曜日なので、働いている人の姿は無い。
土産物を物色。ハワイ定番のマカダミア・ナッツ・チョコレートもあるが、現在の主力商品はマカダミア・ナッツ・ショートブレッドのようだ。これだと溶ける心配が無いので“使い勝手”は確かに良いかも知れない。しかも金色を基調とした豪華なパッケージが高級感をかもしだしているので、ちょっと目上な感じのお土産にも使えそう。さらにシグ・ゼーンとのコラボ・エコバッグとセットで送れば、どんなハワイ通も納得させられることでしょう。さああなたも、おひとついかが?……戦略に乗せられ、関係各位の土産物を購入。
さて、少しは真面目な所にも行きましょう。
パシフィック・ツナミ・ミュージアムPacific Tsunami Museumへ。1946年(アリューシャン地震)と1960年(チリ地震)、2度にわたりハワイ諸島を襲った津波を記録した博物館です。多くの日系移民も犠牲となり、ヒロでは椰子島(Coconut Island)や新町(New Town)と呼ばれた地域が町ごと消滅しました。この博物館を含むダウンタウンから先、海側が無駄に広い公園になっているのは、津波により壊滅したための様です。また、未曾有の被害をもたらしたスマトラ沖地震の状況も解説されていまます。ちょっと不思議だったのは、お土産品コーナー。まるでノースショアのパイプラインを思わせるミュージアムロゴのシャツはまあ良しとして、熱により模様が変わるマグには引いてしまった。普通にサーフィンをしている図柄が、熱を加えると大きな津波が襲いかかる絵に変わる。ブラックユーモアとしては有りだが、それをここで売るのはどうなのよ。日本だったら「不謹慎だ」と言われそうだが、アメリカ人的には啓蒙になればなんでも有りなのか。
さて、昼飯。今回は急に決まった旅行だったので、ガイドブックを全く用意していない。レンタカーを借りるのに地図も持っていない。唯一持ってきたガイドブック“らしき”物が、
へなちょこしゅん著『
行くべしハワイ島 見るべしハワイ島』、通称『べしべしハワイ島』だ。壮絶な人生を軽く生きてきたらしいハワイ好きの著者が、有名な観光地とは関係なく、足の向くまま気の向くまま辿った、ブログのような本だ。実は今日行った、
ビッグ・アイランド・キャンディースも、
KTAも、
ツナミ・ミュージアムも、更に言えば昨日の
ブレインズも、『べしべしハワイ島』で紹介されている。そんな今回の“へなちょこ”旅、昼飯も勿論へなちょこ推薦の
ミヨズMIYO'Sへ。
ヒロは典型的なアメリカの地方都市の様な感じで、住宅地があったり、工場があったり、雑多な感じで、それでいて碁盤の目のように道路が通っている。そして碁盤の目に沿って走っていては気付かない一角に、
ワイアケア池Waiakea Pondを中心とした風光明媚な公園がある。その池畔の一角に建つ、ポリネシア風の建物の一つに、
ミヨズがある。12時前に入ったが、池を見渡せる窓際の席は既に満席であった。
メニューは日本の定食屋。ご飯、味噌汁、おかずの3点セットがいただける。珍しくちゃんとした日本語で書かれたメニューがあり、この日は日本語の出来る(って言うか、日本人?)のスタッフさんも居た。豆腐ステーキと「トンカツ下さい」ときっちり日本語で注文。このスタッフのお姉さん、もちろん英語も完璧でフロアー全体を仕切りながら、時々話しかけに来てくれる。いったい普段は何をしている人?と、思っていたら、後日、とんでも無い所で再会する事になる……。
トンカツはなぜか2枚も。味の方は……まあ、普通です。有りか無しかで言えば、十分有りです。安心して食べられます。そして生野菜が山盛り、これは嬉しい。この先いつ野菜が出てくるかわからないので頑張って食べました。いやあ、食べた食べたと安心していると、お姉さんから「アイスクリーム、如何ですか?」と悪魔の誘いが。実は「冷やし中華、あります」みたいな感じで「
ヒロ・ホームメイド・アイスクリームHilo Homemade Ice Cream、あります」と書かれていたのが気になっていた。お姉さんのお薦めに従い、ショウガ味
Gingerを注文。
ヒロ・ホームメイド・アイスクリームは、なんか
ドラマみたいな歴史が有り、サーファーの聖地、鵠沼海岸にも店がある(どちらかと言えばそっちが本流?)。ショウガ味は、本当にショウガ味(ショウガの繊維が入ってます)。有りか無しかで言えば……ご免なさい、個人的には無しです。いやまあ悪くはないけど、アイスクリームに入れなくても……。
さて、ご飯も食べたし、宿に向かってゆっくりと帰りましょう。ヒロを出てしばらく走ると、島1周道路から海に外れるように、
Scenic Routeが伸びている。ちょっと寄り道。時々すれ違えなくなるほど細い道をゆっくりと下りきった辺りに、あ、ありました、
Na Ala Hele(Hawai`i Trail & Access System)のマークです。
Na Ala Heleは、ハワイ各地のトレイルコースを紹介していて、2003年には
オアフ島で幾つかまわりました。じゃあ行ってみましょう。かなり急な道が海へ向かって下っている。すぐに波の音がしてきて、断崖絶壁が続く美しい風景が見えてくる。下りきった所にゴルフカートに乗ったおじさんが居て、何か説明をしている。レンジャーの人なのかな?とあまり気にせず先へ。道の両側は柵で囲われ、南国の植物が繁っている、後で寄ってみよう。トレイルはそのまま海へ続き、なんと波をかぶる入り江の向こうまで続いている。さすがに引き返し、気になっていた囲いの中へ。きれいに整備されて、まるで植物園のようだ……と思っていたらゴルフカートおじさんがやってきて
「だから入っちゃダメだって」。
ハワイ・トロピカル・ボタニカル・ガーデンHawaii Tropical Botanical Garden。実はここ、有料の植物園で、本当の入り口は別に在るらしい。車に戻り、しばらく走ると確かに立派な事務所がある。入場料は1人15ドルと結構お高いが、せっかくなので入ってみましょう。急斜面に作られたトレイルを、ゆっくりと下る。まず感じたのが、空気がとても爽やか。日本で熱帯植物園に入るとサウナのような感じだが、自然に吹き抜ける風が涼しささえ感じさせる。そして1つ角を曲がる度に色鮮やかな植物が目に飛び込んでくる。坂を下りきると、
Na Ala Heleのトレイルと交差するポイントに到達。ゴルフカートおじさんと笑顔で挨拶……「今度は文句ないよね」。
まったく予定に無い、予備知識も無かった植物園だが、南国の雰囲気を気分良く満喫できた。『およよな生活』的ビッグアイランドとしては、ヒロから
ワイピオWaipio方面のツアーには、ぜひ組み込むべし……。はい、そう言った訳でございまして、ここからはへなちょこツアーに戻ります。
ホノカアに向かってさらに北上、
ホノムHonomuの町へ。『
ホノカアボーイ』の原作にも登場するホノカアよりもさらに小さな田舎町に、ハワイ通に有名な手作りジャムを売っている、
ミスター・エドズ・ベーカリーMr. Ed's Bakeryがある。
「
ISHIGO'S SINCE 1910」。静かなホノムの町に一際目立つ
イシゴズISHIGO'Sの看板。もともとイシゴさんの店があった所が、今はエドズ・ベーカリーとなっている。店に入ると、壁一面に何十種類あるのかわからないフルーツジャムの瓶が並んでいる。それぞれに普通、低糖、無糖があり、合わせれば100種類を超えているだろう。そしてその全てが試食できる。かなり甘めなので、低糖か、無糖がお勧め。
「あの人がイシゴさんよ」。店の一角に置いてある古びたソファーに眉毛まで白いおじいちゃんが。「座りなさい、座りなさい」とお誘いを受けて、しばしお話を伺う。ご本人は日系2世、ご両親は福岡出身。弟さんは、たまたま日本に帰っているときに戦争が始まり、日本兵として戦死したそうだ。「だからね、靖国にいるの」。ちょっと探りながらの日本語で、ご自身の歴史を笑顔で語られている。
アカカ・フォールズAkaka Falls(アカカ滝)に行った帰り(ハワイ島で最大落差の滝で結構メジャーな観光地ですが、およよな生活的には「滝だねぇ…」「そうだねぇ…」程度だったので省略します)、もう一度、イシゴズに寄ったみた。一つ、聞き忘れていた事があったからだ。「イシゴさんて、漢字でどう書くのですか?」。しかし既におじいちゃんの姿は無く、再会は叶わなかった。仕方ないので、へなちょこお薦めの玉子サンドを買って帰路に着く。おじいちゃん、いつまでもお元気で。
島一周道路をさらに北上。次のへなちょこポイントは、
ラウパホエホエLaupahoehoe。津波により壊滅的な被害を受け、捨てられた町らしい。道を下ると広い駐車場があり、皆さん何をしているのか、少なくない数の車が停まっている。かつて移民達の上陸、サトウキビの出荷で賑わっていただろう桟橋は、コンクリートの骨格だけを残し打ち寄せる波に耐えている。まさに「荒磯に波」東映のオープニングのような状態で、のんびり海水浴を楽しめる感じではない。一角だけ、船を引き上げるためのスロープとして使われていたらしい、かろうじて泳げる場所が有り、元気な子供達が波に巻かれて大喜びしている。津波の痕跡が残っているかと期待したが、具体的にそれとわかる物は無く、日帰りピクニックが楽しめる公園と言った感じに整備されている。なんだか拍子抜けですが、打ち寄せる波を見て黄昏たい人は寄ってみて下さい。
お腹も空いてきたし、お家に帰りましょう。晩ご飯は、ホノカアに戻り、
テックス・ドライブ・インTEX Drive Inへ。『ホノカアボーイ』(原作)にも『べしべしハワイ島』にも登場する有名店だ。そして
TEXと言えば、泣く子も黙る、
マラサダMalasadasです。店に入ると、ガラス越しにマラサダが揚げられているのを目にすることが出来る。普通にハンバーガーとか、ロコモコっぽい物とか、食事の出来るファミレスだけど、厨房の半分はマラサダ工場と言った感じで客にアピールしている。次々に訪れる客もマラサダ目当てが多く、家族で“箱買い”し食べまくっている……おいおい今(5時半)それ食って晩ご飯どうすんのよ。
Portuguese Soup(ポルトガルのスープ?)とサラダ、そしてマラサダを注文。エドズの玉子サンドと合わせて簡単な夕食です。スープとサラダはまあ普通に美味い。玉子サンドはなるほど上出来な味、しっとりとしたパンに絶妙な玉子サラダ。これならアカカ滝の帰りにエドズでランチってのも有りかも。そしてお目当てのマラサダは……まあ砂糖をまぶした揚げパンです。なんか給食みたいで懐かしい感じです。ちなみにこのマラサダ、日本でのフランチャイズを募集しているみたいです。
宿に戻ると、女将さんに呼び止められる。「昨日の部屋はちょっと居心地悪かったでしょう、ご免なさいね。違う部屋を用意したから、良かったら移ってくださらない?、面倒でご免なさいね」。いやまあ古びてはいるけど、部屋を変えるほど居心地悪いってことは……せっかくなので案内していただく。新しい部屋は2階の一番奥15号室、つまり角部屋。2面採光で風景と部屋の一体感が素晴らしい。はい、確かに居心地良いです。ありがたく使わせていただきます。「ゴメンね、ゴメンねぇ」ひたすら恐縮しながら女将さんは去っていった。