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2002iceland 08/10
 5時起床。雨はやんだようだ。荷造りをしてフロントに降りてみたがまだ誰も居ない。昨日のうちに精算は済ませてあるのでデスクに鍵を置いてそのまま出た。最後にパフィンの崖を覗いてみるが、朝寝坊な鳥なのか、1羽も飛んでいない。残念。

 朝靄の1号線をひたすら東へ。時折小雨が降る。キルキュバイヤルクロイストゥルKirkjubæjarklausturの町を過ぎる頃から広大な黒砂地帯にはいる。山裾から海岸線まで10数キロにもわたって真っ黒な砂が堆積していて海岸線が見えない。氷河の下を流れてきた、土砂を大量に含む川により作られたそうだ。

 8時頃、溶岩平原の真ん中に車を停めて朝ご飯。昨日スーパーで買っておいたパンとレバーペーストで妻がサンドイッチを作る。行き交う羊(何処から来るの?)を眺めながらの食事は、ホテルの朝食にも勝る格別な物。と言ったらほめすぎかな。

 いざ、出発。先ほどから見え隠れしていた氷河がだんだんと近づいてくる。9時頃、スカフタフェットル国立公園Skaftafellに着いた。管理事務所のすぐそばに広大なオート・キャンプ場があり、多くの車が停まっている。

 管理事務所で、福島から来たという日本人の女性に出会った。昨夜はここに泊まったそうだ。以前にもアイスランドに来た事があるのか、国立公園内の事やアイスランドに大変詳しい。今日は一日トレッキングだそうだ。こんな最果ての国でも日本人を偶に見かけるが、なぜかほとんどの場合、外国人と一緒だ。福島の彼女も、今日は別行動だがフランス人のお友達と一緒だそうだ。しかし何でそんなに外国人のお友達が居るのか不思議。

 さて、この国立公園に来た最大の目的は氷河トレッキング。氷河の上を歩く事だ。駐車場から2キロも歩けば氷河の舌端(氷河の末端部分)に到達する。妻はバナナを持って・・・・なんでやねん・・・・早速お出かけ。道は整備されており、しかも高低差が無いので散歩気分で氷河まで行ける。管理事務所を出た頃はいい陽気だったが次第に風が冷たくなってきた。天候のせいではなく、氷河を伝って降りてくる風のためだ。

 のんびり歩いても30分程度で到着してしまった。黒い固まりが見える。間近で見る氷河は土を被って真っ黒だ。透明な氷の壁を想像していると結構がっかりする。アイスランドは火山活動が盛んであるため、他のヨーロッパやヒマラヤの氷河に比べてよけいに汚いのかも知れない。泥で滑らないように注意しながら氷の上まで何とか到着。指で表面をこすると泥の下から氷の固まりが覗く。これじゃあ舐めることもできないけど、1000年かけてここまで流れてきた氷河の営みを思い、しばし感慨に浸る。

 他の観光客が来たのを潮時に・・・・この感動の空間にうちら夫婦だけでした・・・・車に戻る。氷河だけでこの国立公園を出るのはもったいないが、先を急ぐので仕方がない。氷河に続くメインイベント・パート2、ヨークルサゥルロゥン氷河湖Jökulsárlónが待っている。1号線をさらに東に。氷河を頂く山々を左手に見ながら突き進む。途中名前も無い、それでいて美しい滝が幾つもあった。普通の農家の裏庭のようなところに白糸のように美しい滝が流れ落ちている。通りすがりの観光客が言うおきまりのセリフだが、こんなところでのんびりと暮らしたい。

 もうそろそろ到着する頃だと思っていると、左手の土手のような所が途切れたわずかな隙間から、一瞬だが氷山が見えた。土手の途中まで車を乗り上げ・・・・結構みなさん適当に停めている・・・・そこから上まで歩いて登る。登り切ると、ものすごい景色が飛び込んできた。大きな湖の中に巨大な氷山がひしめくようにして漂っている。遙かかなたには、氷山を今も生み出しているブレイザメルクルヨークトル氷河Breiðamerkurjökullが見える。

 斜面を下り、湖岸に立つ。10数メートルほど向こうに大きな氷山が浮いている。氷山は常に形を変え、時には回転をし水面下の部分が入れ替わるため、スカフタフェットル国立公園で見た氷河のように薄汚れてはいない。まさに自然の芸術と呼べる不思議な形で、どれも青と白のグラデーションが美しい。でもどうしてここだけ黒砂地帯のようにならずに透明な湖になっているのか不思議だ。

 小さな、と言っても1メートル以上はある氷が岸から数メートルの所に浮いていた。裸足になり、水に浸かる。さすがに氷水なので冷たい。氷に手をかけると3つの部分に崩れ、直径50センチ程の固まりが手の中に残った。抱え上げて岸まで戻る。砕くための適当な道具がないのでそのままかじりついた。1000年前に降り積もり固まった氷が、口の中でゆっくりと溶ける。小さな感動が広がる。当然食べきれるわけないので、残った氷は水の中に戻した。ゆっくりと流れ去る。

 車に戻り数分も走ると橋があり、その向こうの観光案内所のような所に到着した。ここでは水陸両用船で湖のクルージングを楽しむことが出来る。見ると確かに巨大なタイヤを付けた漁船のような乗り物が客待ちをしている。早速乗り込む。救命胴衣を着用。定員に達するとすぐに動き出した。路面が悪いせいもあって乗り心地は良くない。銘板のような物を見ると「U.S. ARMY」と書かれていた。どうやらアメリカ軍のお古のようだ。

 乗客の歓声と共に湖に突入。氷の間を縫うようにして湖の奥に進む。ガイドの説明によると、ここは湖と言っても潮の流れにより海水が入り込む、汽水湖らしい。海水が入り込むと言っても、来るとき越えた小さな水門のような川では氷が外海に出ることはないだろう。なんでこんな地形が出来たのか、重ね重ね不思議。

 ガイドさんが、小さなボートに乗った男から、片手でも持てるくらいの氷のかけらを受け取る。「1000から1500年前の氷ですよ。食べてみてね」と、砕いて乗客に配る。「これ以上進むとタイタニックになるのでここまでね」とベタなジョークで帰路に就く。

 昼飯を食べ、帰路に就く。今回の旅行はここで折り返し。ここからはレイキャヴィークReykjavíkを目指してひたすら西へ。時間に余裕があったので、スカフタフェットル国立公園に戻り少しトレッキングをする事にした。整備された遊歩道をスバルティフォスの滝Svartifossまで歩く。自然豊かな公園で、低木が茂っている。スバルティフォスを含め、3つの滝が順に並んでおり、歩いていても飽きない。振り返ると海岸線まで続く黒砂地帯が見える。

 30分ほど歩くと滝が見えてきた。柱状節理の中の美しい滝だ。滝壺までは数100メートルの下り坂。ゆっくりと下る。なぜかバナナを食べながら、滝壺のそばに腰を下ろし休憩。水量で言えばしょぼい滝だけど弧を描いて迫るようにそびえる柱状節理が見事だった。あまり気張るとこの先疲れが溜まりそうだが、この爽快感には代え難い。満足して、帰路に就いた。

 今日のお宿はホテル・キルキュバイヤルクロイストゥルHótel Kirkjubæjarklaustur・・・・ってこの名前なんとかならへんの。スカフタフェットルからは60キロ程。人口170人程の小さな町だけどアイスランド航空系列の立派なホテル。嬉しいことに電気湯沸かし器があった。お茶漬けが食べられるぅ。実は真空パックのご飯を日本から持ってきたのだが、何処のホテルもお湯が無く(従って部屋でコーヒーやお茶がいれられない)困っていたのだ。わさび茶漬けを食べ、満足満足。


08/10 end


Photo
黒砂地帯puffin 黒砂地帯
緑っぽく見えますが、溶岩と黒い砂を厚いコケが覆っています。
Skaftafellsjökull氷河puffin Skaftafellsjökull氷河
手前のボードに氷河後退の様子が示されています。ここ50年で1キロ程度、後退しています。地球温暖化の影響で、氷河の崩落、洪水が心配されています。
氷河登頂puffin 氷河登頂
普通に立っているように見えますが、足の下はすべて氷です。もう少し(数キロ)上がれば綺麗なのかもしれませんが、舌端部分の氷河は真っ黒です。
ヨークルサゥルロゥン氷河湖puffin ヨークルサゥルロゥン氷河湖
ヤイコ風。冷たいです。寒いです。夏で良かったです。
なにかの撮影を行っていました。「トゥーム・レイダーTOMB RAIDER」のロケ地になったそうです。
スバルティフォスの滝puffin スバルティフォスの滝
柱状節理。溶岩が急に冷やされて6角形の鉛筆状に固まったそうです。日光の華厳の滝など、日本でも各地にあります。本当に鉛筆サイズなら持って帰ったのだけど。
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