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1998scotland 05/14
 朝6時、小さな天窓を開けて首を出す。港の中とは言え、一晩中揺られて眠れなかった。冷たい風が心地よい。羊の群れが、かつてここで生活をしていた人が居た事を示す石作りの建物群の間を歩いている。コンクリート造りの、おそらく英国軍の物と思われる建物にはまだ動きは無い。しばらく横になっていると、ようやくキッチンで音がし始めた。デッキに上がり紅茶をいただく。朝食が始まる。何種類ものシリアルと、罐詰めの果物、大豆のスープにポーチドエッグとベイクドトマト。相変わらず食欲は無いので、申し訳ないが半分以上残してしまう。島への上陸に備えて、各自昼飯用のサンドイッチを作った。10時、いよいよ上陸。ゴムボートに乗り替え、桟橋へ向かった。

 ついに「世界の涯て」の島に上陸、って感慨に浸るよりも、船の揺れから解放されたことの方が嬉しかった。最初にナショナルトラストの事務所に立ち寄る。事務所は小さなコンクリート作りの建物。中にはロバート・レッド・フォードのような美男子が居た。こちらが日本人と知って、「2年前にテレビの取材が来て俺はそれに出演した。それを見て来たのか?」と嬉しそうに尋ねてくる。恐らくTBSの世界遺産を紹介している番組の事だろうが見ていない。そう伝えると残念そうな顔をしている。しかしこんな半無人島に2年も暮らしているのだろうか。

 ロバート・レッド・フォードの案内でこの島の史跡を巡る。昔の学校や教会、住居の跡。砲台の跡もある。一通り廻ったところで自由行動となる。早速丘の上を目指して歩く。今回の旅の最大の目的、「世界の涯て」に行くために。

 標高400m程度の丘だが、麓と比べると風も強くダウンジャケットでも寒い。それでも船の揺れから解放されて気分は良い。丘に登り、崖っぷちに立つ。砂浜があるのは湾内だけで、反対側は数百メートルの断崖絶壁、まさに世界の涯て。たくさんの海鳥が飛び交っていた。

 目的を達すると、何もする事がない。草を食べる羊を眺めながら一日過す。浜辺で寝ると多少は暖かい。海鳥が至近距離を飛び交う。散歩中の、軍に勤める看護婦さんと話をする。1週間交替で、ヘリコプターでやってくるらしい。ついでに軍の施設でトイレを借りる。古尾谷雅人に似た長身の若い兵隊さんに基地内を案内してもらう。途中パブのような部屋があり、今夜パーティーがあるので来ないかと誘われた。行きたいのは山々であるが、お酒を飲んで船に戻るのはかなりやばい。残念だ。夕方 (明るいので時計の上でだが) になり、船に戻る。夕食後、私たち2人以外の全員はパーティーに行ってしまった。彼らが戻ってきたのは午前2時だった。


05/14 end


Photo
セントキルダ島 砲台跡puffin セントキルダ島 砲台跡
ナショナルトラストのロバート・レッド・フォード
ソイ・シープ Soay sheeppuffin ソイ・シープ Soay sheep
「ソイ種」と呼ばれるこの辺りの島々にのみ生息する鉄器時代の羊。
自然に抜け落ちる毛を集めて衣類を作っていたそうで、島のそこいらじゅうに茶色の毛が落ちてます。
ヒルタ島 全景puffin ヒルタ島 全景
左端の建物が軍の設備。扇状に連なっている黒い屋根の家が昔の住居。中は羊臭い。
島の裏側puffin 島の裏側
氷河に削られた数百メートルの断崖絶壁。
断崖の下は海です。
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