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2003hawaii 10/08
 早めに起床。気を取り直して(うちの夫婦げんかは翌日まで引きずることはないのだ)、今回の旅の最後のイベント、マウナ・ケアMauna Keaへ向かう準備をする。たっぷりの水を用意し(飲料水だけでは無い)、防寒着の準備をし、出発。

 朝食はボルケーノ・ビレッジVolcano Village(国立公園のそばにある町)のボルケーノ・カフェVolcano Cafeというパンケーキ屋で食べる。この時間は恰幅のいいおじさんが一人でやっているようで、なかなか忙しそうだ。テラスの席に座り、風を感じながら待つ。「この店はファーストフードではありません」という但し書きがこだわりを感じさせて好感が持てる。出てきたパンケーキには目玉焼き(最初に調理方法を確認してくれる)やソーセージも付いてボリュームたっぷり(二人で一人前を注文したのだが正解だった)。味も素晴らしい。満足満足。

 マウナ・ケアへは、まずヒロHiloの町まで戻り(これでハワイ島Hawaii一周達成だ)、内陸部を縦断するサドル・ロードSaddle Rd.を走る。ここからがこの車の真価が発揮される時だ。実はこのサドル・ロード、レンタカー屋によっては走行が許可されない。ましてや普通のレンタカーではマウナ・ケア山頂まで行くことはできない。唯一マウナ・ケアへ行くための車を貸してくれるのが、今回利用したハーパー・カー&トラックレンタルズHarper Car and Truck Rentalsなのだ。

 標高1,000メートルを超えたあたりで少し休憩。すると、雲に覆われていたマウナ・ケアの山頂がわずかの間だが頭を出した。3つ並んだ天文台がはっきりと見える。さて、あそこまで無事にたどり着けるだろうか(ちなみにこの辺りには軍事訓練地域Pahakuloa Military Areaがあるので余り停車しない方がよいかも)。

 サドル・ロードは、どちらも標高4,000メートル以上のマウナ・ケアとマウナ・ロアMauna Loaの間にはさまれた峠道。日本だと碓氷峠のようにつづら折りの難所になりそうだが、ハワイの溶岩は水のようにだらだらと流れるだけなので山のすそ野ものっぺりとしている。標高2,060メートルの峠まで、ヒロから40キロの道は緩い蛇行を繰り返しながらもほぼ真っ直ぐに続いている。快適なドライブだ。

 峠に到着。荒野の十字路。右に行けばマウナ・ケア、左に行けばマウナ・ロア。当然右に曲がる。ここから山頂までは直線距離で15キロ、標高差2,000メートルの道のりだ。多少、道の傾斜がきつくなる。牧草地のような広々した土地を進むと、最初で最後の休憩地、オニヅカ・ビジター・センターOnizuka Visitor Centerに到着する。

 1986年、スペースシャトル、チャレンジャー号の事故で亡くなった日系人宇宙飛行士、エリクソン・オニヅカの名前を冠するこのビジターセンター(正式名称、オニヅカ国際天文学センターOnizuka Center for International Astronomy)には、インスタント食品や土産物の売店と、簡単な展示スペースがある。マウナ・ケアを目指す場合、薄い空気に慣れておくため、最低30分はここで過ごす事が推奨されている。

 たいていの人は夕方から来るようで、まだ午前中のこの時間、駐車場には数台の車しか無い。売店でカップラーメン(なぜか小さいサイズしかない)を買い、ボルケーノ・ビレッジのスーパーで買っておいたスパムスビと共に昼ご飯。気圧が低いせいか、ラーメンの出来はいまいちだが、しょうゆ味のおむすびは美味しかった。

 ぶらぶらと2時間近く過ごした後、いよいよ山頂へ向けて出発。ここからしばらくは未舗装路となる。4WD車以外での走行は禁止されているようだ(「危険であるため一般乗用車での通行は推奨されない」という表現のガイドブックもある)。この8キロの未舗装路のため、普通のレンタカーでは走行できないし、ハーパー・レンタカーでも出発前に厳重なチェックを行う事が必要になる。

 しかし、狭くてカーブが多くて雨が降るし雪も降るような道を走り慣れている日本人には全く問題はない。巨大な天文台を作るための材料(日本が誇る世界最先端の天文台、スバル望遠鏡Subaru Telescopeの鏡は直径8メートル、22トン)を運び上げるだけの道幅は確保されているので多少スリップしても道を外れる事はない。

 ただし、薄い空気に体が順応していく時間を考慮してなるべくゆっくりと登っていく。走行中に気を失ってはそれこそ命に関わる。舗装路に変わった所(山頂付近は車がほこりを巻き上げないように舗装されている)にある駐車場で小休止。

 車外に出て深呼吸。少し感覚がおかしいのがわかる。表現が難しいが、例えるならば立ちくらみ直前の状態が続いている感じだ。ここで走れば間違いなく倒れるような予感がする(でも富士登山駅伝は、このくらいの標高を走っているんだよね)。全く音がしない荒野の真ん中に立ち、通常ではない感覚でいると、ここは別世界のようだ。

 再び出発。一般人が何処まで行ってよいのかよくわからなかったが山頂とおぼしき所まであっさりと到着。標高4,200メートル制覇。空は何処までも青く澄み渡っている。耐えられるかどうか心配していたうちの妻も元気なようで、なんだか拍子抜けだ。実はわざわざ日本から粉末の酸素発生装置を準備してきたのだが、全く役立たずになってしまった(そのために水も数リットル余分に持参したのに)。

 高台からスバル望遠鏡を見下ろす(標高の高い所から先着順で建設されているため、スバルは少し低い位置にある)。他の全ての天文台はドームが球体であるのに対し、スバルは円柱形をしているため否が応でも目立つ。そして美しい。

 夕方まで時間があるのでビジター・センターまで戻る。土産物コーナーにはスバルグッズがたくさんある。一番絵になるからか、日本人がたくさん来るからか。眠くなってきたので車でお昼寝。本当は、眠ると呼吸が浅くなり酸素不足に陥るため「寝たら死ぬぞ〜」なのだが、山頂まで行っても無事だったので余裕こいて寝てしまった。

 気が付くと、車が増えている。ほとんどが日本人の団体ツアー客だ。高度順応を兼ねて、皆ここで食事をしている。弁当に、味噌汁まで付いている。おかげでビジターセンターの中は味噌のにおいが充満。オニヅカさんも困っている事だろう。さて、そろそろ夕日を見に出かけますか。

 他のグループが登り始めるのに会わせ、一緒に登る。山頂の天文台付近に車を止め、日没を待つ。下界はあまり天気が良くないようで、空と地上の間は見渡す限り雲に覆われており、その一角に太陽は沈んでいく。飛行機の視点だ。水平線(便宜的にこう呼ぶが、海が見えているわけではない。雲平線とでも言うのだろうか)にかかるくらいまで沈んでも空はまだ青い。地上で見る夕日は空一面を茜色に染めるが、空気が薄く澄んでいるためだろうか。そして太陽はだんだんと水平線に飲み込まれ、夜を迎えた。

 他のグループは三々五々撤収を始めた。各天文台はドームを開き動き始めているが、日没後も意外と星が見えてこない。星が見えるまでもう少し居たかったが、最後の一台になるのも不安なので、あきらめて下山。サドル・ロードは、土砂降りの雨だった。


10/08 end


Photo
マウナ・ロアpuffin マウナ・ロア
標高4,169メートル。マウナ・ケア以上にのっぺりしています。
スバル望遠鏡puffin スバル望遠鏡
完成は1999年。建設費3億ドル。
マウナ・ケアの夕日puffin マウナ・ケアの夕日
意外と高いところまで雲が発生しています。
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